現代の医学について

コラム

私たちが現代の医学から受けている恩恵は限りありません。特に救急医学や感染症に関しては、20世紀前半までなら生命の危機に瀕していた病気が、技術の進歩や薬物の発展で完治したり、寿命まで生きられるようになりました。

しかし、特に日本では医療の供給が多すぎるように思います。
病床数は世界一(米英の4倍)、外来受診数世界2位(北欧諸国の3〜4倍)CT・MRIも保有台数も世界一(英国の7倍)となっています。行き渡るという意味ではいいのですが、一方で必要性の少ない検査や治療が行われていたりします。
(上記の数字は森田洋之先生のnoteより。とても長いですが、医学の発展の歴史や増え続ける医療費の医療経済的考察など、良記事です!)

私の専門の精神科領域でも、10年以上の超長期入院者の問題や、効果なく有害な多剤大量処方の問題、心理療法に保険適応がなく薬物療法に偏りがちな診療の問題、などたくさんの問題があります。

そういう問題のある精神科領域の中でも、正しく医療や薬物、心理療法が役立てることはたくさんあり、医学的に適切な診断や薬物療法がなされていないために、改善できる状態が改善できていないことも驚くほどあります。

しかし、一方で、自分自身にとって自然で無理のない生活ができなかったり、社会的な孤立などが不調の本体で、いくら薬を飲んでも本質的な解決にならないこともたくさんあり、むしろそちらの方が割合としては多い印象があります。そういう場合、今の日本の医療の枠組みだけでなんとかしようとしてしまうと、本来はそれほど効果がないのに、やたらにたくさんの薬を処方されて単に苦しさを紛らわすだけになってしまっていたりします。

私は今臨床の場は持っていませんが、標準的な医学を信頼しています。精神科でも全ての薬が悪ということはなく、本当に必要な場合に適切な治療をすれば、人を救います。しかし、問題は、医療が必要な人には適切な薬や治療が届いておらず、正しく行われていなかったり、薬が有効でない、むしろ有害だったりする人に出されていることです。
標準的な医学が悪いのではなく、その適用の仕方が拡大されすぎている状況があると思っています。

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