バッチフラワーレメディ/フラワーエッセンスについて

バッチフラワーレメディ

私が今まで学び試してみた補完代替療法(CAM)の中でももっともシンプルで使いやすいもののひとつにバッチフラワーレメディ(Bach Flower Remedy)があります。

バッチフラワーレメディは感情に働きかける

バッチフラワーレメディは、イギリスの医師エドワード・バッチ(Edward Bach 1886-1936) が1930年代に発展させました。
バッチは病気の経過における心や性格、ものの考え方や感情に目を向け、それらを癒す手段を自然の中に探し、森や草原の花々から作成したエッセンスを治療薬として用いました。

科学的な考え方からするとそれらのエッセンスが心に影響を及ぼすということは考えにくいかもしれません。
ただ、私たちがひまわりを見たときとスミレを見たときの感情は異なります。多くの人がひまわりに元気さや陽気さのようなを感じ、スミレには控えめさのような印象を持つのではないでしょうか。それは花の大きさや色、生育する環境、季節の影響などの情報も関係してきますが、花そのものが持つ印象、動かす感情は、個々の人に異なる部分もありつつも、多くの人に共通する印象が必ずあります。フラワーレメディはそういった、多くの人が共通に持つ感情に働きかけると私は考えています。

エドワード・バッチ医師の道のり

バッチは医師免許取得後、ケンブリッジ大学で公衆衛生の学位を取得し、ロンドン大学病院(University College Hospital London )で外科/内科医として、またその傍ら開業クリニックでも診療し、細菌学と感染症に関心を持ち研究を続け、腸内細菌からのワクチンの作成に携わりました。折りしも第一次世界大戦の時代、フランスからの傷痍兵たちの治療病棟での激務の続いたバッチは1917年に脾臓の腫瘍から大出血を起こし、同僚の手術後余命3ヶ月の宣告されましたが、彼は自分にはまだやるべきことがあると感じ、すぐに仕事復帰しそれまで以上に没頭しました。その結果彼の体調は病前よりも良くなり、回復しました。使命に没頭した結果病から回復した自分の体験や、それまでの臨床経験から、バッチは病気における心の関与に目を向け始めました。
1919年から、バッチはロンドンホメオパシー病院( London Homeopathy Hospital, 現在はRoyal London Hospital for Integrated Medicine)で勤務を開始しました。自分のワクチンの研究経験から、弱毒化した病原体を摂取し身体からの治療的応答(免疫)を得るワクチンと、病原体を希釈したものを摂取することで治療的応答を得るホメオパシーの相同性を感じ、ノソドという感染症の7つのレメディを作成しました。それらは当時多くの慢性病患者に効果があり、英国では現在も使われています。
感染症やその他の診療経験から、同じ病原体に晒されてもある人は発病し、ある人は発病しない、そのことについてバッチは考え続けました。ノソドだけですべての慢性病を治療できないこと、また病原体由来でない、もっと安全で純粋な治療を求めて、バッチは自然界の中に癒す力を求めていきました。
バッチはその人の魂の目的と、パーソナリティからくる行動やものの見方の間に葛藤がある時に病気が生じると考えました。そして、感情を癒すことから病気が治癒に向かうと考えました。

ある朝、彼は散歩している時に、花びらの上できらめく朝露を見て、フラワーレメディのヒントを得ました。日陰の植物の朝露と、日向の植物の朝露を飲み比べ、日向の花の上の朝露に心を癒す効果があると感じました。1928年にインパチェンス、ミムラス、クレマチスを発見し、治療に使い始めました。
以降、イギリス中を放浪しながら、心を癒す植物を探していき、38種類のレメディを作成しました。

バッチフラワーレメディの作成法

バッチフラワーレメディには太陽法と煮沸法の2つがあります。太陽法は、花をガラスのボウルに入れ、朝の光に2ー4時間当てます。
煮沸法は、木に咲く小さな花を使う場合は花を火にかけ20ー30分煮出します。それらのエッセンスをブランデーで保存したものをマザーティンクチャーと呼びます。それをさらにブランデーで希釈したものが市販のストックボトルです。
これらのストックボトルから数種類のエッセンスをカウンセリングで選び、数滴ずつ調合したものを服用します。バッチフラワーレメディは

バッチフラワーが示すもの

このように、バッチフラワーレメディはその中の分子が科学的に証明できる作用を持つものではありません。上に書いたものも、あくまでもバッチ博士が独自にたどり着いた理論であり、誰にでも効果があるというよりは、どちらかと言えば植物や花に対して親和性を持っている人に向く療法と思っています。
ただ、朝の光の中で静かに開く花たちを見たときに、心に、あるいは無意識に動く感情は人間に共通する部分が必ずあると思います。花々が表す心の状態は、スキーマ療法における早期不適応スキーマ(周囲の環境と自己との関わりについての絶対的な信念や感じ方。自分や他者と関係における、ネガティブで堅い思い込みや信念)に似ていると私は思いました。たとえばクラブアップルの「私は汚れている、愛されない」という信念は、早期不適応的スキーマのうち断絶と拒絶に分類される「欠陥/恥スキーマ」、つまり欠陥があったり劣っている、本当の自分を出すと人は愛してくれないだろう、というスキーマと重なります。精神的・肉体的病気の有無に関わらず、どんな人にもそういう、共通する思い込みのパターンが多かれ少なかれあります。それが強く堅く柔軟さを欠くとき、周囲の人のそれとぶつかるとき、不調を起こす源になります。花々の力はそこにはたらきかけます。

人間は物質的な部分だけでできているわけではありません。物質は多くの人間に概ね共通に作用しますが、それに対する個人の反応は様々で、それは生理的なレベルから、心理的・精神的レベルまであります。しかし、それが同じ病気が同じように治ったり、同じ薬が同じように効くとは限らない理由です。
補完代替療法の様々なメソッドはその個人の生理的、心理的、精神的な個性や、価値観の違いなどに細やかに寄り添うことを理念としています。物質のように強い安定した作用を持つものではありませんし、それゆえにこそ適用する状況をきちんとわきまえる必要があります。しかし、それをわきまえていれば、通常の医学の治療が届かない、心身のはたらきの部分について知り、補っていくことができると思います。

【参考文献】
e-パスタイム エドワード・バッチ博士の紹介 https://pass-thyme.com/guide/edward_bach.asp
Bach Centre https://www.bachcentre.com/centre/drbach.htm_
ニールズヤード式フラワーエッセンスLesson 河出書房新社
パーソナリティ障害の認知療法 ー スキーマ・フォーカスト・アプローチ 金剛出版

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