ゲンチアナ( Gentiana amarella ) はリンドウの仲間です。開けた乾燥した丘の上に生育します。草丈は30-40cm程度で、葉は細長く、夏の終わりから初秋に、青紫色の尖った形のつぼみをたくさんつけ、晴天の日に開きます。群生はせず、単独で生えることが多いです。
リンドウは古代エジプト時代から薬用として使われています。属名ゲンチアナは最初に薬草として医療に役立てたとされるイリュリア王国(現バルカン半島西部)の王ゲンティウス(BC2世紀頃)に由来します。プリニウスの「博物誌」にも根をワインに浸したものは咳によいと記載されました。中国では1-4世紀には根と根茎が薬として常用され、2-3世紀に編纂された「神農本草経」には龍胆として消化器や泌尿器の熱や炎症を取りのぞく生薬として収載されています。
龍胆の名前の由来は中国の説話からです。ある夏、黒い龍の烏龍(ウーロン)が天から枯れた湖の上に落ちてきて苦しんでいたので、人々は烏龍を助けるために離れた湖から水を運び、3日3晩かけて湖を満たしました。水を得た烏龍は元気になり、天へ飛び去っていきました。翌年、湖の周りに美しい青い花が一面に咲き、その花の根は肝のように苦かったのですが、様々な病気に効く薬草であることがわかりました。人々は龍の恩返しと思い、その花に龍胆と名前をつけました。
ヨーロッパで薬草として使われるのはリンドウの仲間でもやや背が高く1メートルほどになり黄色い花をつけるGentiana luteaで、ヒルデガルトの本にも記載があります。青紫のリンドウと同じく根は苦い苦味配糖体を含み、食欲消化促進作用や抗炎症作用があり、健胃消化薬として現在もよく使われています。
バッチフラワーレメディのゲンチアナは、自分を信じることに関わります。少しでも進行が滞ったり、予期しない困難に出会うと、疑いを持ってしまい、悲観的になります。ゲンチアナを使うことで、自分や自分が信じたものごと、人を信頼し続けることができます。それはあたかも、水で枯れた湖を満たすことができる、龍を救うことができる、と信じ、水を運び続けた人々のようです。ほんとうに信頼したときには、信頼するという概念すら必要なくなり、行為になります。苦味の中の薬効のように、苦い経験がもたらしてくれる恩恵を信頼して、その中を通過していくことができます。
【参考文献】
「神話と伝説にみる花のシンボル事典」 杉原梨江子 説話社
「バッチの花療法」フレグランスジャーナル社
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